Thursday, December 23, 2010

アートセミナー「テートモダン」(その3)


ジャクソン・ポロックの描くアートの第一印象は、"子供の落書きみたいだから自分でも描けそう"なんて恐れ多いもの(苦笑)。アクションペインティングおよび抽象表現主義の代表的画家として、第二次大戦後に活躍したこのアメリカ人画家は若くして自動車事故(本人の酔っぱらい運転...なんからしいなぁ...)で44歳で亡くなってしまいました。そして今、彼の作品は、世界で最も高額な絵画ベスト2としてランキングされています。"高く売れるからいいアートである"、なんて言うつもりではないけれど、やはり時代が彼についてきた、とも言えるのではないでしょうか。

先生のスライドでこの作品により近づいてみると、彼がいかにこの絵画を計算しつくして描いていたのかが見えてきます。こうして離れてみると、どこか踊っている人であったり、運動している過程であったり、お祭りという宴の風景のようであったりと、一定のリズムを感じる。黒い影のような形が、きっとそんなリズムの主軸を作り出しているに違いない、なんて思っていたら、やはり様々な色をランダム(のように)に描いた後に最後にこのリズムである黒をのせているようです。そんな風に考えると、いかに彼がこの絵画を描く時に多くの事を考え、そして単純化してきたのか。そんな風に思って、この作品を改めてみるとその奥深さに恐ろしくなります...。


ジャクソンの絵画の対面するように、印象派を代表する画家であるモネの作品が並べられているそうです。テートモダンのキュレイター(Simon Wilson)の素晴らしき発想ですよね。普通に時代ごととかテーマごとに展示するのではなく、観ている人に"なぜ"を提供する。20世紀アートは、知識で補えるアイコンがないこともあって、考える種を受け取って自分なりのこたえを見つけ出すきっかけを生み出すことに面白みがあるのでは、なんてことを彼は私たちに伝えてくれているのかもしれません。

ちなみに。先生のロンドンでの授業に参加していた日本人が、この2枚の絵を観て「モネの絵の方が落ち着く」と言葉を発したそうです。理由はなぜかと問われると「モネの絵画の方が、uncontrolledだから」。

ジャクソンの方が正直、何をかいているかわからないし、いわゆる落書きにも見える。だけど、彼の言葉からはuncontrolledなのはモネ、という回答。おそらくそこには日本人の美意識があるのかもしれません。浮世絵に代表される欧州絵画とは異なるアンバランスさ、連続的やきっちり感ではない季節に美しさを見出す日本人。印象派が好きな日本人のヒミツ(今年はなんせ祭りのように印象派だらけの展覧会でしたよね。w)はもしかしたらそこらへんにあるのかもしれません。

(つづく)

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