Saturday, October 08, 2022

「イッタラ展」


一年の多くを室内で過ごす北欧の人々にとって生活の質はとても大切で、日が差さず暗くなりがちな室内においてはとくに暖かみや温もり、明るさが大切でしょう。また、大量生産されたモノでは無く木やレンガなどの自然素材を熟練の職人によるハンドメイド的なモノが好まれていて、それが北欧デザインの根幹であるとも。

北欧と私が生まれ育った北海道は、そんなところが共通する趣向なのではないかと思います。だからなんとなく惹かれてしまう。今回の展覧会を観ながら、自然や光とか、流氷とか幼い頃に過ごした町々を思い出しました。
Bunkamuraで開催中の「イッタラ展」。創業140年を記念した日本初の巡回展ですが、なかなか興味深かったです。泣く子も黙る(笑)アアルト夫妻をはじめとする数々のデザイナー紹介や日本と縁あるデザインコラボなど見どころ満載で、なぜこのラインナップで展開していたのかとか、頭を整理するとかも含めてとても楽しめました。そうそう、いらしていたお客様もちょっといつもの美術展とは違いましたね。アートというよりはプロダクトとしての興味が強い方が多かったのかもしれません。
会期は来月10日まで。ぜひ足をお運びくださいませ。

Friday, September 23, 2022

「新章 パリ・オペラ座 - 特別なシーズンの始まり-」

このドキュメンタリー映画のベースになっているヌレエフ版『ラ・バヤデール(以下、バヤ)』。この演目には2つの思い出があります。

一つめ。初めて現地でパリオペを観た演目がバヤ。自分でも笑ってしまいますが、その時のエトワールの誰が踊っていたのかは覚えていないのですが(爆)、当時プルミエールだったMarie-Agnès Gillot(2004年にエトワール任命、2018年退団)の"ガムザッティ"演技と踊りに魅了されて号泣してしまったことが思い出されます。
二つめ。遡ること大学時代。(熊川)哲也くんがロイヤル・バレエ入団直後に来札して、ブロンズアイドルを踊ったんですよね。回転が早かったのかなんなのか、その時彼のズラが吹っ飛んでついつい笑ったこと、そして初めて見るバヤに大感動してこれまた泣いたこと。いや、、、それほどこの演目は素晴らしいのですよ。最近では日本でも全幕上映されることも増えましたがなかなか観られる機会がないかもですが...。
前置きが長くなりましたが。
そんなこんなで、今回のドキュメンタリー映画を観ながら後半は泣けてしまってやばかった。しかもこの時の無観客オンライン配信の舞台、、、私観てたんですよねぇ。だからあの時のダンサーたちの想いとか舞台裏を知ってこれまた涙涙。あああああ、本当リアルでしか味わえることがない観客との一体感とかあるよな、、って。ううう、思い出してもまた泣けてきます。
前半のリハーサルシーンも秀悦。コロナ禍でジャンプやリフト(男性が女性を持ち上げる動き)を数ヶ月もできなかったダンサーたちの言葉や不安の言葉など、心を打ちました。拍手がない舞台がどれだけ辛いかって想いや、ダンサーたちの絆とかいろんなことを感じました。あああああ、よかった!!
バレエ好きではない方にもオススメ。食わず嫌いなくご覧になってみてください。

Tuesday, September 20, 2022

「Immersive Museum」


没入型アートというとこの数年世界的にも流行りですよね。私が一番最初に体験したのは、2018年4月にParisでオープンした「L'Atelier des Lumières (https://www.atelier-lumieres.com/)」 でしょうか。いつもお世話になるアパートメントの近所にあるので、渡仏すると一度はお邪魔するお気に入りのスポットです。広い空間の中、壮大な音楽に合わせてみられる映像の数々。テーマによって全然違う姿や発見があって面白い。

ということで今回、日本初と銘打っている没入型体験ミュージアム「Immersive Museum- "印象派"IMPRESSIONISM」にお誘いいただきお邪魔してきました。日本人が大好きな印象派をどう解釈して映像化しているのかも気になったしね。
で...感想。

まずはすごい人気なんだな、ってことに驚き。決して安くないだろう入館料だというのに事前予約で全て売り切れ。当日券は夜遅めの回じゃないとダメらしくて私が伺った時間でもお断りされる方々も。次に連休だったからなのかな、お子様連れが多かったのもびっくり。とはいえ、かわいそうに飽きていて走り回ってたけどねぇ...。同じように客層でいうと、写真が撮りたくてきたのだろう女子の多さにもびっくり。映像みないでスマホのぞいていたからきっとソーシャルでもupしているのでしょうか?本当すごいエネルギーですよね、彼女たち(笑。
さて....真面目に感想。
色々なシーンをまるで紙芝居のように映像を転換させていくっていうのは面白い切り口だと思いました。入場と同時にいただけるパンフレットを見ながら復習しましたが、美術館に入っていく人々の映像から展覧会へのナビゲーション、画家たちの技法を紹介している映像や二次元表現を三次元表現にして絵画の中に導かれるものとか、最後のまとめとして画家たちの肖像画を紹介していくとか、、、とても日本的だなと思いました。他国だったらどこから始めってどこで終わるかなんてよくわからないスタイルだからね。
あと、ソファがきちんと用意されているのも興味深いな、って思ったかな。カップルシート的なイメージなのかしら?
ともあれ、日本的解釈がこうなるってことを観察できたことも興味深かったです。
ただ個人的好みを言えば、もっと全体的に暗い方が没入できるだろうなーって思ったし、ソファを用意して寝っ転がってというなら天井含めてマッピングあったほうが楽しめる気がしました。子供たちも多かったから退屈で走り回ったりしてる姿が視界に入ったり、音楽がちょっとアンビエントな感じだから、どうしても現実に連れ戻されてしまう。ここら辺がもったいないな、と。まー、初の試みでもあるし、次回に期待したいところです。
どちらにせよ、最後の最後の仕掛け絵画やお土産売り場のラインナップ含めて楽しめました。

Saturday, August 27, 2022

travail de base(本質の仕事)

 

日本とフランスでお花の仕事をしている友人がこんなことを言っていた。

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店頭で接客をしていると日本でのキャリアがある人でも「いかがなさいますか?」といういスタンスでお客さまにお伺いをたてる人が多い。それに対して、フランス人やイタリア人スタッフはまだ花の仕事を始めたばかりの人でも「今日はこれがいいよ」と自分の好きな花を真っ先に勧める。
そしてその言葉を受けたお客さまの方も「いかがいたしますか?」というスタッフに「私があなたから選ぶ意味がないわ」と、提案しなさいよという言葉を発している。
おそらくこれが日本の仕事のスタンス違いなんだと思う。
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学ぶことが多いって思ったエピソード。私は提案できているだろうか。

Friday, August 26, 2022

fini de lire: 「自由になるための技術リベラルアーツ(山口周著)」


リベラルアーツとは「自分を縛る固定観念や無意識的な規範から自由になるための思考手段(武器)」であると著者は定義されています。この言葉の具体的な意味として、ビジネスの場でよく言われている「常識を疑う」態度でなく「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める為のレンズ(メガネ?)を持つということとであるとも。とても理解しやすい解説だと思いました。

人は知らぬ間に固定観念に囚われ、視野が狭く深くなっていくとふとした時に気づきます。いや、平時では気付くことは少ないかもしれないけれど、有事では気付く。VUCAな世界の到来、コロナによってそもそもの常識が常識でないことを知った私たちにとって、機会はもっともっと増えていくのではないでしょうか。
そんな揺らぐ時代に自立するためということでこの本の中では、多くの対談及び事例が紹介されていましたが、その内の一人、ライフネット生命の創業者でもある出口治明氏の言葉がとても心に残りました。
出口氏は「人と話す」「本を読む」「旅に出る」の3点が重要と語りその中でも「旅に出ること」は1次情報=ナマ情報、最も多様性を生みやすいとお話しされていました。生涯移動距離=新しい発想を生み出す力になる、と。なるほど、確かにそう!!いつもいつも旅していた私が、コロナ禍において全く旅立てなかった故に私自身がどこか保守的になっていて、新しい発想を持てなくなったていたのかもしれない。そうだ、そうだ!!やっぱり旅に出なきゃ(→都合のいい解釈)。
リベラルアーツ。今一度意識しながら学びたくなる一冊でした。お薦めです。

Wednesday, August 24, 2022

Ce que l'art peut nous apprendre(アートが教えてくれること)

 最近、"モダニズムと印象派"について色々調べていて、ふと思ったりしたこと。100年前の出来事だったのだけど、もしかしたらとっても似ているのかもしれない、今の時代と。

私のメイン場であるマーケ世界では、デジタルはもはや避けられないものです。でもね、これって企業の区分として"デジタルマーケ"って(いまだに)呼ばれるわけですが、もはやその区分が古いんじゃね?って思うんです。でもこれってもう一般化していて避けられないでしょう、、、ってね。


で、改めてアートから考えてみたわけです。今の時代。
私が勝手ながら思うのは、印象派が生まれた時代というのは当時の「今」に合わせるように表現を重ねていた時代なんですよね。産業革命によって変化あったイギリスに遅れて起きたフランスにとって、それまで100年以上続いた革命の後に一気に新しい時代がやってきた。でも、その新しい時代においても実は一番拭い去りたい100年だったを乗り越えたのに、やっぱり格差が生まれてしまった、、、そんな混沌な時期だったのだと。

だから、、、華やかさと貧困(影)みたいなことが入り混じっていて、ルノワールやドガが描いた華やかさ、ロートレックやマネが描いた娼婦たちが生まれた。これって、、、その時どういう感じだったのだろうって興味を引くわけです。
日本人はとっても印象派が好きだと言われています。
モネ、セザンヌ、ゴッホ、マレ、ルノワール...etc...。彼らが何故そんな表現をしたのでしょう?
認められなくて南仏で不貞腐れて山ばっかり描いていたセザンヌやオランダ出身故に色々めんどくさい哲学的思考のゴッホ(そうじゃないとひまわりを切り花で描かないよね)。モネに影響されて点描とかしたけど、やっぱり女好きが爆発したルノワール。パリという都会にいたからこそ孤独を感じて現代のビーナス(娼婦)を描いてすげー怒られちゃったマネ。なーんて、美術評論家に怒られそうな勝手なる私の見解ですが、間違いなく言えるのは彼らは新しい時代に生きるために葛藤してたんだなって。今(当時の今)の区分なんてどうでもいいって思っていたのかな、って。
IT業界にいたりして、モバイルとかやっていたりして、デジタルマーケとかやっていたりして、、、なんですけど。基本アナログな私は今のこのなんともいえない企業によって差異があるデジタルとアナログの違いというか感じがやっぱり苦手。
デジタルは単なるツールというか手段であって、別にそれがどうのとかよくね?って思っちゃったりする。それよりももっと人間の本質とか知りたいなって思うんだよなー。
さて、、、仕事しよ。

Sunday, April 24, 2022

スコットランド国立美術館 -THE GREATS 美の巨匠たち

 "山場はどこだったのだろう?"とふと考えてしまう展示だったので、ちょっと残念に感じてしまった展覧会。いや、素晴らしい作品はいっぱい来日しているのだけれど、時代ごとに並べて延々と画家のキャプションがついていたのが気になったかなぁ....満足度としてはちょっと残念な感じでした(個人的感想です)。

ベラスケスの『卵料理をする老婆』とかね、すごく好きなんです。これ描いた数年後にスペインハプスブルグの首席画家になっちゃう人が数年前はこんなの描いていたわけですよ。マドリッド人じゃなく、この人やっぱりセビリア出身だなーって思うわけです。セビリアといえば、フラメンコ発祥だったりジプシーなところでしょう。いいよね、この土臭いというか泥臭い描きっぷり。イタリアバロックとはえらい違いだよね。だからそのコントラストとか同じくバロックを紹介しているのだから対比させたらよかったのになー。

そうそう、ベロッキオも1枚きていました。ダヴィンチのお師匠さん。ちょー正しいルネサンスで、マリアが美しい!若い!あと、ルーベンスもいたし、エルグレコもいた。ミレイやゴーガン(いつから"ゴーギャン"表記じゃなくなった?)、ドガにモネ。いやはや、色々持っていますわね、って。でも、やっぱり、、、プレゼンが気になるんだよなぁ、もったいないなぁ(しつこいけど、個人的感想です)。

でもね、別の視点で考えてみたら...六本木で開催中の「メトロポリタン美術館展 」、只今札幌にいる「ドレスデン国立古典絵画館 」とかと合わせたら今、日本にはやばいくらいの作品がいっぱい来日しているんだよね。簡単に観に行けない状況が続いているし、これはやっぱり観ておくべきだと私は思います。二年前に行くつもりだった『エルミタージュ』に行くのは、もうしばし無理だって思うから余計にね。

会期は7/3まで。始まったばかりです。ご興味ある方は是非。
https://greats2022.jp/

Monday, April 18, 2022

イスラエル博物館所蔵 ピカソ ― ひらめきの原点」

20世紀最大の画家、パブロ·ピカソのちょっと玄人好みな展覧会。いつも思うけれどイスラエルが所蔵している作品って、欧米のものとは全然違う視点が多い気がします。今回もそう。こんなの持ってるんだーっていう100点はとても見応えが。でも「ピカソを観たい!」という気持ちできたらちょっと残念な人も多いかもだなぁ...。

展示は彼の生きてきた年代とテーマ、それに影響を与えた女性たちもとにまとめられていましたが、短期間で膨大な作品を生み出していたピカソを改めてすごいエネルギーであっただろうと感じました。そしてなにせ付き合っていた女性が若い!!この時って70歳よね?って思いつつの20代!きっと走り続ける男、ピカソって魅力的だったんだろうなぁ(遠い目)。

私としてはゲルニカを生み出す直前の作品群がとても興味深かった。今の時代もそうだけれど、戦争というエネルギーは芸術家といった感性の人にとって怒りというパワーを生み出すのかもしれない。作品を観ながらそんなことを考えました。
会期は6月19日まで。小さな美術館なので予約必須です。

Friday, March 25, 2022

「未来の音楽会 -INNOVATION × IMAGINATION -」

低遅延通信技術を使った実験的音楽会に行ってきました。違う場所にいる"オーケストラとピアノ"、"オーケストラとバンダ"がリアルタイム・リモート演奏に挑戦するという新しい体験。非常に面白かった!

普段私たちが使っているzoomとかの会議ツールの遅延の仕組みとかも実際にステージ上で試してみたりとか、そういう意味でも勉強になったし、何より久しぶりのオケと兄弟ピアノの「レ・フレール」のキャトルマン(4本の手)の素晴らしい演奏。大満足でございました。
演奏された「桜」は、桜の咲く季節のそのさまを表現したまさに今の時期の一曲。とても美しいから是非聞いてみて。

Wednesday, March 23, 2022

「プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる」


 "完成された商品やサービスではなく、商品やサービスが作られる過程にこそ価値があるという考え方"、いわゆるプロセスエコノミーというwordについて、自分の中にあったものを言語化してくれた一冊でした。

新しいって話ではないのだけど、頭の整理にとてもworkしてよかった。読みやすい一冊でした。
https://www.gentosha.co.jp/book/b13836.html

さて、、、難読であろう課題本に取り掛かるか。

Sunday, March 20, 2022

「ミロ展-日本を夢みて」@Bunkamura

今回の展覧会の副題は"日本を夢みて"。ミロは日本好きで、書や陶芸、民藝品等から多くのインスピレーションを受けて作品を創ったといいます。ジャポニズムに影響を受けた画家としては、ゴッホやモネなども有名ですが、彼が見ていた日本というのが2Dだけではなく3Dまでに発展していたってことが興味深かったかな。実際に来日した後の作品の変化についてもね。

「書」というアートが、ただ文字を伝えるものではないことは、M社時代の先輩たちが"それぞれのカタチ"を描いている書の作品 を見せてもらうようになって、すごく実感するようになりましたが、一筆に表される線やフォルムだけで、こんなにも"日本"を感じるのだということに改めて驚きました。アジアでもこれは"中国"じゃないってなぜわかるのでしょうか。そんなことを展示を観ながら感じたことのひとつです。

ちょっと毒吐きます(苦笑)。不定期で放送されている「日本称賛番組」。某番組サイトには「私たちが当たり前と思ってきた日本の様々な文化が外国の人たちには格好いいモノとして受け入れられ、流行していることを再確認する」が主旨だと記載されてましたが、これ本当かなぁ??って思っちゃいます。エンタメだからしょうがないとは思いつつ、なんでしょうか....ストーリーの最後は"日本は素晴らしい"っていうことがお決まりフォーマットになっていて、現実と乖離があるのではと疑ってしまう、というかリアルじゃないですよね。

話を戻すと私はアート好きだからかもですが、こうやってミロの人生に触れて、彼の頭の中と一緒に展覧会を観るという体感するだけで「あああ、私が知らなかった日本がこういうところにあるんだ」って感じるわけです。もちろん「今(令和)」ではないけれど、100年前に日本がどのように見られていたかのかについて知ることができる。それによってもうちょっと知ってみたくなる。やっぱり"リアルなものに敵うエンタメはない"と私は思います。なんだろ、それくらい今回のミロの頭と同化しながら見た日本文化は興味深いものだと再確認できました。

会期も残りわずかになってきましたが、4/17まで。
ぜひリアルを感じてきてくださいね。

https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/22_miro/

Tuesday, March 15, 2022

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」


口から阿弥陀仏が6体、これは‘’南無阿弥陀仏‘’を視覚化した姿なのだそうです。

京都から半世紀ぶりに、重要文化財《空也上人立像》がやってきました。京都の六波羅蜜寺では正面からのみしか観れないけれど、こちらでは360°で観ることが可能。なんともありがたいことです。

いやしかし、一緒に東京にきてくれた仏像たち。ほぼ重要文化財って、どうやって運ばれてきたんだろうって、妙に気になってしまいました。。。

会期は5月8日まで。是非ご対面くださいませ。
https://kuya-rokuhara.exhibit.jp/

Friday, March 11, 2022

「ダミアン・ハースト 桜」

 ダミアン・ハーストと聞いて何を思い出しますか?ホルマリン漬けになった死んだサメ、8,601個のダイヤモンドで覆ったスカルの彫刻。そうなんですよ、なんだか挑戦的な作品が多いイメージがあるるアーティストさん。

故にびっくり...なんですよね、この「桜」の美しさ。アクションペインティングのジャック・ポロック、点描画のスーラ、さらに言えば蜷川実花ちゃんとかが頭によぎるわけです(いやだよね、この頭でっかちコメント)。でもね、なんとなくオリジナルであることもとても感じる。不思議な不思議な「桜」三昧といった本日のお花見でございました。
まだ始まったばかりだし、ゆったりした空間を楽しめるからおススメです。ぜひ行ってみて!!

Wednesday, March 09, 2022

「ゴヤの名画と優しいどろぼう」(2020英)

 原題は「The Duke(公爵)」。盗まれたゴヤの「ウェリントン公爵」の意だと思いますが、階級社会の英国で、自分ではない誰かの為の活動を続けた60歳の主人公の"理不尽なことに立ち向かう心の強さ"に対する敬意も兼ねてるかも、なんて...。

税金の無駄遣い、人種差別、公共放送の受信料など、現代日本にも通じる社会問題も散りばめられ、前半からテンポ良い展開。イギリス映画っぽく派手さこそないものの主人公のユーモア溢れる口調に惹き込まれます。後半の法廷シーンは秀悦。傍聴人はおろか陪審員や裁判官、そしてこちら側に座っている観客をも虜にしてしまう答弁シーンは本当に素晴らしく、私もどっぷり裁判に参加している気持ちになり判決のシーンは涙してしまいました。愛ある言葉というのは本当に人の心を動かすんだね。彼こそ心底ストーリーテラーだと感じました。
妻との掛け合い、親子問題などもあって色んなことが凝縮されているものの、なんだか見終わった後はほっこりして、本当に優しい愛に包まれている気持ちになる温かい映画でした。やっぱり「ノッティングヒルの恋人」の監督だな、、、とも。
邦題からだとアート系映画と勘違いしてしまうかもだけれど、泣けるし笑えるしオススメです!!是非是非。

Tuesday, March 08, 2022

「やさしい日本語――多文化共生社会へ」

 "やさしい日本語"というタイトルから語学本と思われるかもしれませんが、本書は日本が「多文化共生社会」を目指すには、外国にルーツを持つ子どもたちが日本社会で自己実現できるための条件として"日本語をやさしくする"という内容が書かれている一冊です。


もう少し簡単にいうと、外国人がたとえ日本語を間違って使っていても日本人側が"推測できる力"を身につけるためにどうしたらいいのか、というような内容で現状の課題が挙げられていました。これは話し言葉だけではなく幹線道路の上に見かけるナマズの看板(地震が発生した時の優先道路)みたいなものも含まれていて、「ナマズ=地震」って外国人ではさっぱり意味がわからないよね、といった指摘も。要は一番大切なことは、どうすれば伝わりやすいか「相手の立場に立って考える」ということ、について言語学の視点からのアプローチです。

「やさしい」という意味は、どちらかというと「置き換え」に近く、その意味から言うと人としての優しさであり、わかりやすさという意味での易しさのスキルをどう考えるかなんてことも、巻末にまとめてありました。これ仕事上でも非常に使えるかもなんて思ったので、ご紹介しますね。
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★情報を取捨選択し、一文を短く
想定する読み手を絞って、相手に何を促したいのか、という視点から整理します。その際、不必要な情報は思い切って削ります。

★結論や大切な情報は、なるべく文書の最初に書く
一番伝えたいことは先に明示します。また、下線や枠囲いなどで強調する ことも有効です。

★必要に応じて補足情報を加える
それだけでは意味が理解しにくいものは、()書きなどで補足の説明を加えましょう。また、★や※などで注記するのも有効な手段です。
(例)高台(高いところ)、土足厳禁 ※靴を履いてはいけません

★図やイラストを活用する
難しい漢字や意味も一目で理解出来ます。(例)天麩羅

★漢字等にはひらがなでルビを振る
カタカナにもひらがなでルビをふりましょう。
カタカナ英語や擬音・擬態語も使わないようにします。
(例)キャンセル⇒やめる、 頭がガンガンする ⇒頭が痛い

★分かっていないと感じたら、別の言い換えを行う
理解していないと感じたら、どんどん別の言葉で言い換えてみます。
(例)公共交通機関を利用してください⇒バスやタクシー、電車で来てください ⇒自分の車で来てはダメです

★難しい単語や言い回しは使わない
(例)納付してください ⇒お金を払ってください
ご用件は何ですか? ⇒どうしましたか?
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コミニケーションは伝わってこそなので、聞いて当たり前、分かって当たり前ではないことを認識することから。先にも書きましたが、こういう配慮が外れてしまっている文章とか職場で日本人同士にもよくみますよね。外資あるあるでのカタカナ塗れとか、社内用語や略語などもこれに当てはまる気がします。果たして本当に伝える気があるのか?伝わって当たり前、聞いてもらって当たり前は特権ではないのかしら?むむ

改めて伝えることの大切さを思い出させてもらった気がしました。かくいう私のこの文章、皆さんにとって「やさしく」あることを期待して。汗

Monday, March 07, 2022

「ドレスデン国立古典絵画館所蔵 -フェルメールと17世紀オランダ絵画展-」


2015年11月にドレスデンいるこの娘に会いに行った時は、当然修復前。久しぶりに再会した彼女はちょっと若返ったような、不思議な印象でした。話題の"キューピット"は想像以上にデカくてびっくり。下手したら彼女より大きくないかしら?笑

フェルメールだけでなく、レンブラントやライスダール等のオランダ画家たちも一緒に来日しています。私の大好きな北方ルネサンスを受けたオランダ画家たちは、やはり緻密な表現(レースとか毛布、絨毯とかすごいぞ!!)をしていて双眼鏡持参したらより楽しめるかもしれません。
日本のフェルメール人気もあってめちゃ混んでいましたが、修復作業について紹介されている2階フロアはぜひ時間をかけて見たいところです。平日午前中か閉館前が狙い目かもしれません。
私は札幌でもう一回観ちゃうもーん♪

Saturday, March 05, 2022

「メルケル 世界一の宰相」

世界経済フォーラムが2021年に出した男女格差をはかる"ジェンダー・ギャップ"指数。日本は156カ国中120位、政治ジャンルに至っては147位という燦々たる結果でした。

昨年16年続いた政権から退任した独のメルケル元首相。彼女の生い立ちから近年の辛酸を嘗めたる政権運営までを綴った一冊を機会あって読みながら、改めて素晴らしい女性政治家であったことを再認させていただきました。決して派手なパフォーマンスや美麗字句を並べるようなスピーチを好まず、行動を持って示していく。粘り強く人間関係を構築していく。本書に出てくるプーチンやトランプとの交渉姿は感動的でもありました。
2019年5月30日のハーバード大学卒業式で行われたメルケル首相のスピーチ(https://youtu.be/TH9lvz178UA) は、ドイツ国内では決して見せない感情溢れる姿を垣間見ることもできました。だけど拍手にどう対応していいかわからない表情をしながらついつい遮断して話始めてしまう彼女の不器用さ加減もたまらなかったな。
はてさてしかし。メルケルという政治家のいなくなってしまった世界は何やらきな臭い状態にあっという間に突入。今更ながら彼女の偉大さを感じずにはいられません。

Friday, March 04, 2022

「メトロポリタン美術館展 - 西洋絵画の500年-」

 "メトロポリタン美術館"というは国立でも市立でもなく、いまだ理事会が運営する美術館であることにまず驚き。また設立の背景には、資産家の息子 J.P.モルガンが大きく関与していて、1900年初頭に議会に圧力をかけ(政治家に親戚がいるとこういうことするのね。

💦)、"国外から持ち込む美術品への 関税を廃止させた後"で、自身のイギリスの邸宅からアメリカへ運び込んだ作品たちがコレクションの40%近くのボリュームを占めているのだそう。
恐ろしい。それ故に、欧州コレクションがこんなにもアメリカで所蔵されているってことなのかってことを改めて実感するくらいの素晴らしい作品がいっぱいで見どころ満載でした。
フラ・アンジェリコ、ラファエロ、クラーナハ、ティツィアーノ、エル・グレコから、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、レンブラント、 フェルメール、ルーベンス、ベラスケス、プッサン、ヴァトー、ブーシェ、そしてゴヤ、ターナー、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ドガ、ゴーギャン、ゴッホ、セザンヌ。戦争での略奪やらお金のばら撒きやら、きな臭く切ないこともいっぱいあるけれど、こんなにも名の知れた画家たちを日本にいて観ることができるとは、いい時代になったといっておきましょう。

私の大好きなカラヴァッジョも(無事)来日していたし、平日夜はやっぱり追い立てられることなくゆっくり観ることができるのでとってもオススメです。
あ、あと!!展覧会ショップの中にあるラ・トゥールの 《女占い師》 のフェイスチェンジャーは是非試してみて。超笑えます。

Tuesday, March 01, 2022

イマーシブシアター「Venus of TOKYO」


観客が演者と同じ作品空間に同居しながら物語の一部として作品に参加することができるイマーシブ
シアター。NYで「no more sleep」を観た時に、日本ではこういう演目は無理だろうって思っていたから、やってると知って即体験。コロナで大変だとはいえ、かなり演出含めて頑張った作品、超楽しかった!!

とはいえ、観客である日本人はこういう作品に慣れてないのもあって、なかなか団体行動から抜けきれないのがもどかしく。早く演者を追いかけたくてウズウズしちゃった😅

ストーリーもオリジナルより、なんとなく演劇要素があってもいいかなぁとか色々頭も使いました。こういう刺激、久しぶりでワクワクできてよかったな。ふふふ

3月まで上演だからまだ間に合いますよ!!!是非。